秘境と名高い紀伊半島を巡ってきた話 Part.0
1.秘境、紀伊半島
『秘境』と呼ばれる地域がある。
アクセスは悪いし宿を取るのも一苦労。
道中トラブルがあったら無事に帰ることができるかも怪しい。
しかしながら、たどり着くまでにかかるコストは大きいが、その代わりとして日常生活では得難い素晴らしい景色や経験が待っている。
そこに魅せられてしまったマニアックな旅人は多い。
きっとそのはずである。
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『紀伊半島南部』と呼ばれる地域がある。
アクセスは悪いし宿を取るのも一苦労。
しかしながら、たどり着くまでにかかるコストは大きいが、その代わりとして日常生活では得難い素晴らしい景色や経験が待っている。
そこに魅せられてしまったマニアックな自転車乗りは多い。
きっとそのはずである。
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キリストの墓以来、近場のサイクリングロードや馴染みのヒルクライムスポットだけではなんだか物足りなくなってきた今日このごろ。
あのキリストの墓レベルのインパクトを求めて、ある一つの単語をググる俺。
『秘境』
そこで目に留まる『紀伊半島』という地名。
もしかしたら、あの謎の高揚感をまた味あわせてくれるかもしれない。
そんな直感を頼りに企画した紀伊半島ライド。
いざ。

2.紀伊半島の特徴
(1)地形
ツーリングに赴く上で欠かせないルート構築。
そこでポイントになってくるのが地形。ざっくりと紀伊半島の地形的特徴を見てみましょう。
もう海から即山。これに尽きます。
山がそのまま海へ突き出ているような地形で、海岸線は無数のアップダウンとトンネルが続きます。
内陸は山岳地帯だけあって登坂成分は多め。
しかし、登りっぱなしというわけでもなく、どちらかというと登った分だけしっかり下っているイメージ。
ただ、海岸線を走るルートと違って無数にルートがあるため、「選択するルートによる」としか言えません。
(2)気候
地形の特徴がわかると、気候についても見えてきます。
下図の雨雲レーダーの画像を見てみましょう。

これは、ツーリング当日の雨雲の様子です。
紀伊半島南東部に強烈な雨量の雨雲を示す赤色が多発しています。
これは、海から即1000m級の山岳地帯となるため、海から湿った空気が流れ込むと積雲が発達しやすいという理由があります。
加えて沖合には黒潮が流れているため、南からの暖かく湿った空気が流れやすく、雲の発達に輪をかけてます。
三重県南東部に位置する尾鷲市はこの特徴をモロに受けており、急激に発達した積雲による強い雨のことを「尾鷲の雨」と呼び、『尾鷲の雨は上からも下からも降る(強烈な雨ゆえ地面からの跳ね返しも強烈)』などと言われるそうです。
ちなみに尾鷲市は日本で4番目に雨が降る市とのこと。
さらにツーリングに赴いたこの日は、房総半島に甚大な被害を残した台風15号が過ぎさってから数日しか経っておらず、東からの強い風が吹いていたため、紀伊半島南部に強烈な雨がもたらされたと思われます。
もし紀伊半島南東部を通過する場合は、この強烈な雨を想定した装備をチョイスする必要があります。
3.ルートと日程
今回は5月のキリストの墓ライド以来の自転車ツーリング。
あのとき炒めた膝も今の所調子はいい感じですが、無理をしないよう普段より1日あたりの距離を短めに設定。
何よりよってみたいスポットがちらほらあるため、今回は長距離を走ることよりも観光メインということで。
-- 9/12(木) ------------------------------------------------------------
1時間の時間休暇を使い仕事をはや上がり。
最終ダイヤに乗り、名古屋のネカフェで1泊。
-- 9/13(金) ------------------------------------------------------------
・_0km 熊野市スタート
・20km 丸山千枚田
・60km 熊野本宮大社
・65km 川湯温泉ゴール
-- 9/14(土) ------------------------------------------------------------
・_0km 川湯温泉スタート
・50km 太地町 - くじらの博物館
・80km 潮岬 - 本州最南端
・90km 串本町ゴール
-- 9/15(日) ------------------------------------------------------------
・__0km 串本町スタート
・_60km アドベンチャーワールド
・105km 御坊市ゴール
-- 9/16(月) ------------------------------------------------------------
・__0km 御坊市スタート
・_65km 和歌山市ゴール
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4.自転車と装備

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・フレーム:Ridley - NOAH RS (2013)
・ホイール:Fulcrum - Racing Zero Carbon
・タイヤ:Veloflex - Corsa (25c)
・ギア比:(F) 50-34t / (R) 12-25t
・ハンドル:Ritchey - Comp EvoCurve Compact Handle (400mm)
・ステム:ITM - Alcor 80 (110mm)
・ペダル:Shimano - XT PD-M8020
・フロントバッグ:Fairweather - Handlebar Bag
・サドルバッグ:Topeak - Back Loader(6L)
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いつぶりだろうか、久しぶりにNOAH RSを導入。
今回のツーリングの目的として、
①エアロロードで快適なツーリングは可能か
②フロントバッグ導入による重量の分散はどれくらい効果があるか
の2点を確かめることも含まれます。
①を実現するための考慮として、
・ローハイトの軽量ホイールを使う
⇒横風の影響軽減、登坂対策
・フロントバッグの使用
⇒スローピングフレームによるフレームバッグの代替
の2点。
もともとレース用として17°ステムをどん突き&コラムカットしていたためフロントバッグとタイヤが厳しかったところを、10°ステムに変更することでクリアランスを確保しています。
そして手持ちの最軽量ホイールはレーゼロカーボンですが、このままですと乗り味が固くなりすぎてしまうと思い、(個人的に)乗り心地最高のヴェロフレックス・コルサをチョイス。
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②の調査のために導入したバッグは、Fairweatherのハンドルバーバッグ。
パナモリのときはいつも使っているフレームバッグもFairweather製。

構造としては、ロールクロージャー式のインナーバッグをハーネスで挟み込み、その上からアクセサリー・バッグを被せる形。
ロールバッグ自体は最大12Lとのことですが、クリアランスの厳しいNOAH RSの場合はせいぜい2~3Lが限度。

コクピットはこんな感じ。

アクセサリーバッグには、カメラの予備バッテリー、偏光フィルター、ちょっとしたお菓子、トラベラーズノートを収納。

5.いざ紀伊半島ライドへ…
秘境と呼ばれる紀伊半島南部。
いつもどおり、若干の不安をいだきつつも期待と好奇心に後押しされての4日間のライド。
大きな移動コストをかけて赴いたその地には、果たしてこのしみったれた日常を吹き飛ばすような何かがあるのだろうか。
次回、本編をお楽しみに。